マラナタ 主よ 来てください!


畠神父


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 「神々と男たち」

5月3日(火)メディアは一斉にオサマ・ビンラディン容疑者の米特殊部隊による殺害について報道していた。「戦争行為なのか、国家による暗殺なのか?」テロとの戦いは果てしなく続くと予想される。これは悪循環でしかなくこの悪の連鎖を断ち切る道はないのか? 手段・方法から見れば、国家による暗殺事件でしかないが、テロ撲滅戦争の目的からすれば、報復行為ではなく、戦争行為の遂行で、正義の回復行為として歓迎され、ニューヨークのグランドゼロでの勝利の叫び声が報道されていた。法治国家の行為としては、同盟国として受け入れがたいところです。

 この日、朝から映画館へ出かけたのは、60歳以上1000円の入場料の恩典を受けるためではなく、「神々と男たち」の評判を聞いて出不精のわたしも心が動かされました。映画館に行ったのは、「パッション」以来かもしれません。

 映画館の解説パンフレットによれば、
 1996年アルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を題材に、映画化された作品で、2010年度カンヌ国際映画祭でグランプリンを受賞、9月8日から四週連続ロングランの大ヒット、304万人を動員し、社会現象化した作品。サルコジ政権がイスラム文化排斥の動き(ブルカ禁止法)にたいするアルカイダ系テロ組織による報復宣言に揺れるフランスで、話題となった。

 テロと戦うためには、人間性を成長させる環境を育てなければならないと思うが、その前に、この映画が伝えるような非人間的な決断をした厳律シトー会の修道士たちの愛の行為に出会わなければならないのではないか?自分たちを殺そうとする者を、信条の違い、生活の基盤の違いにも関わらず同じ兄弟として愛する人が実際にいることに出会わなければ、テロリストはなくならないでしょう。修道院長だったクリスチャンの遺言が英語版から曽野綾子さんが訳しています。(2001年9月14日に週刊ポストに掲載された記事「昼寝の化け物」の中でこの事件を紹介しています。このパンフレットの最後のページに収録されてます。)
 

 オサマ・ビンラディン殺害の翌日にこの映画を見ることができたのは、摂理的で、とても印象深く、何か涙目になるが、同じ信仰を持つ励ましと誇りを感じました。国際的な紛争の解決には、クリスチャン神父の手紙が語るように、「意味を知らずに殺害する者の中にも神の顔を見て自分のいのちを差し出す決意がいる。何の価値も見出せないとしても、無名の人の死と同じように数えられ、誰にも関心を持たれないままになるとしても、わたしの罪の許しと同時に私を殺す者を赦したいという決意」私たちには、とてもできないように感じるが、映画に紹介されるシトー会の修道士たちの共同体の祈りの中で、修道士たちは一人ずつ共に祈りつつナイジェリアの紛争の最中にある村の一隅の修道院に留まる決意を表明するまでの期間、クリスマスから最後の晩餐の日まで、そのプロセスを肉薄して修道士たちの表情を描写するのがこの映画の魅力を高めている。共に祈ることのできる永遠の時を奏でる真理に導く。もう一人のキリストとして語りかけるように、院長クリスチャンは、ゴルゴタの丘でイエスと共に十字架にかけられて永遠の命を約束される盗賊たちに語りかける。

 わたしたちは、罪びとであっても、神のあわれみを必要としている人間として、最期の別れの時には、クリスチャンが言うように、恐れず、イエスと共に十字架にかけられ、天国の約束を自分のものにしよう。この痛みと苦しみがわたしを傷つけ殺す者のゆるしとなるように祈りたい。イエスが弟子を友と呼びかけた時、ユダもそこにいたことを思い出しました。すべての人の救いのためにイエスはいのちを与えられてのです。ここに平和への希望の道が綿々と続くでしょう。
クリスチャン神父の手紙の一部:  
「わたしの死によって、わたしがナイーブで理想主義的だと片付けてきた人々の意見のほうが正しかったと見えるかもしれない。”あの男がここに至ってどう考えるか、聞かせてもらおうじゃないか”ということだ。しかしこういう人たちにわかってほしい。・・・これこそがわたしのなしうることなのだと。もしそれが神の望みであるならば、御父の眼差しの中に浸ることによって可能なのではあるが。
そして神なる御父と共に、イスラムというこれも御父の子共たちのことを、御父と同じ目線で考えていきたい。キリストの栄光、ご受難の聖化の光、聖霊の賜物に満たされて、その人知れぬ喜びが、常に人々との交わりを作りだし、相違を楽しみつつ、類似を作りだすことでもあるのだ。この失われる命は、完全にわたしのものであるが、同時に彼らのものでもある。

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