マラナタ 主よ 来てください!


畠神父


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 待降節 第三主日

説教ノート:
待降節 第3主日

 待降節は、ラテン語でADVENTUS といい 来ることを意味します。 主がこられる。そのことを証しすることが今日の福音のテーマです。

 メシアの到来、油注がれた方が世に来られる。 「わたしは水で洗礼を授けるが、あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる。」 

この知らない人は、マタイの福音書では、小さな人々のことだと断言しています。「おまえたちは、わたしが餓えていた時に食べさせてくれ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ」と王が言うのを聞いて、いつそのようなことをしたかと祝福された人たちが王に聞くと、「わたしの兄弟であるこのもっとも小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。」

12月10日付で、日本の司教団は、世界人権宣言60周年にあたって、司教団メッセージ「すべての人の人権を大切に」を発表しました。待降節は、キリストの光、キリストのご自身の姿をわたしたちの中に反映させる決意の時です。司教団の発表は、日本の社会においてだけでなく、わたしたち自身の生き方の中で、振り返るポイントを示しているように思います。

 メッセージの中で、「今日の危機的局面を打開するためには、そのすべての要因を一つひとつ根気強く取り除いていく必要があります。そのためにわたしたちは、貧しく弱い立場に追いやられ、大切な人間関係を断たれてしっている人々、人間らしい生活が損なわれ、あるいは妨げられている人々の側に立って、この世界を見ていかなければなりません。この小さくされた人の視点が欠けているとすれば、たとえ悪意がないとしても、それは「ある程度の人権侵害はやむを得ない」とする側に立つことになってしまい、人権問題の解決にはつながりません。」
と述べておられます。

 <小さくされた人の視点>は、キリストの立場に立つことです。それは、コンパッション、共感ということだと思います。共に苦しみを担うことです。このことに関して、ハリー・ポッターの著者、ローリングさんが分かち合った話が印象的だったのでちょっと紹介します。彼女の人生の中でもっとも貴重な経験の一つは、20代前半に、ロンドンにあるアムネスティ・インターナショナル本部の<アフリカ担当の>調査部にいて、全体主義政府に抑圧された人々が、発覚すれば投獄される危険を冒して、彼らの過酷な実情を告発するために走り書きした手紙を読んでいたことです。彼女は毎日、人間が権力を狙い保持するために、同じ人間に対して行ってきた悪魔のような仕打ちの数々の証拠を見ました。やがて彼女は、悪夢にうなされるようになったのです。見たり、読んだり、聞いたりしたことが夢に出るようになったのです。同時に、アムネスティーインターナショナルの職場で、それまで知らなかった人間の素晴らしさも知ったのですと・・・ 彼女は証言します。「今まで拷問されたことも投獄されたこともない何千人もの職員たちが、拷問の被害者や囚人のために活動していました。人間が他人に共感する能力こそが、人々が力を合わせてアクションを起こし、いのちを救い、囚人を解放する力になったのです。
幸福と安全が保障されているごく普通の人たちが、今までに見たこともない、そして一生会うこともないだろう赤の他人を救うために、大勢集まってきたのです。その一端に私が参加したことは、わたしの人生の中でもっとも衝撃的な、そして刺激的な経験となりました」と・・・

 そして、彼女は、想像することの力について語ります。人間は、地球上のいかなる動物とも違って、自分が経験しなかったことをも、学び、理解できるということです。人間は他人の心を思いやり、他人の状況を想像する力を持っているのです。この力は、彼女の小説に出てくる魔法のように、良いことにも悪いことにも使えるのです。他人に同情するためではなく、人を操りコントロールするためにこの力を使う人がいるのです。そして、重要なことは、他人に共感することを拒否して生きる人は本物のモンスターになってしまうかもしれないことです。自分自身の悪と戦うのをやめた人は、無関心のうちに悪と共謀してしまうのです。彼女は、18歳の時に出会ったことば、古典文学の図書のなかから見つけたものですが、プルタルコスの書き遺した言葉、「人が内面で達成したことは、外面の現実を変える」という格言に人生の指針を受けました。彼女の小説のバックボーンになっているものです。これが意味することは、わたしたちは下界とのつながりを断つことは決してできないこと、そして、わたしたちはこの世に存在する限り、他の人たちの人生と触れ合って生きているのだということです。

 このような話は、小説家に聞くまでもなく私たちは知っていることなのですが、世界で一番売れた小説家の話には説得力があります。彼女はこのスピーチを今年のハーバードの卒業生にお祝いの言葉として贈りました。
 「もし、あなたが、あなたの地位と影響力を使って声なき人のために声をあげるならば、もしあなたが力を持った人だけでなく、力を持たない人にも共感することができるならば、そしてもしあなたが、あなたのような地位を持たない人たちのことまで想像できるならば、あなたは自分の家族からだけではなく、あなたのおかげで醜い現実をよい方向へ変えることのできた何十万、何百万の人たちから祝福を受けることができるでしょう。世界を変えるのに魔法の力など必要ありません。必要な力は、皆さんに備わっています。その力は想像力です。」

 わたしたちは、想像力と同時に祈りの力であると断言しましょう。 マラナタ、主よ 来てください。わたしたちの内なる力は、復活された主が共におられることなのです。

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